夕方
朝のうちはぼんやりしている。
昼にかけては高校野球中継を眺めているか、古い洋画を見ているか。
夕方が一番つらい。
無性に不安になったり、イライラしたりする。
薬は一日一回、夕食後に飲む。
薬を飲むと楽になるから、夕方のこの時間を『ヤク切れ』と呼んでいる。
双極性のつらいところは、うつ病と違って、気分を極力ローに保たなきゃいけないところだ。
自分自身はこんなに惨めな気分なのに、それで「寛解している」なんて言われる。
確かに、どん底のときは死にたくて起き上がれなかった。
でも、やっぱり戻りたいと願わずにいられない。
ハイだった、なにもかも楽しかったあの頃へ。
一生、こんなつまらない毎日を送るくらいなら、ハイアンドローのジェットコースターに乗っていた方がマシだ。
そう思いながら、我慢して治療を続けている。
誰も分かってくれない。
みんな、私に「良くなってよかったね」と言う。
出口が見えない。
もっと活動的になって、満足感をもって夜を迎えられるようになりたい。
「好きなことをしていていいよ」と言うけれど、好きなことをして楽しめなかったとき、本当に死にたくなる。
好きなことをするのが、むしろ怖い。まだ怖い。
だから、高校野球中継を見たり、古い洋画を見たりしている。